カッとするような暑さに包まれると、「あぁ、また夏が来たな」と思う。
それだけのことなんだけど、ここ何年かは、そのあとに必ずもうひとつ思うようになった。
「あと何回、この暑さを感じるんだろう」
たとえば車。
助手席に乗り込んだ瞬間、もわっとした熱気に包まれる、あの感じ。
昔はただ、「早く動き出して、エアコン効いてほしい」ってそれだけだった。
でも今は違う。
あの一瞬の、車内にたまった暑さそのものに、なんとも言えない感情が湧いてくる。
「あぁ、この感じ……あと何回味わうんだろうな」
汗をかきながら、じっと耐えているあの短い時間に、
暑さが「しんどさ」じゃなくて、「記憶」や「回数」になって立ち上がってくる。
そういえば、暑さに対してだけじゃない。
麦茶を飲みながらふと考える。
この味、あと何回味わうんだろう。
アストラムラインに揺られているとき。
車窓の景色をぼーっと眺めながら、
この景色、あと何回見るかなぁ。
コメダ珈琲でたっぷりサイズのコーヒーを飲む時。
エディオンピースウイング広島でサッカー観戦をしている時。
何気ない一つ一つに、「あと何回これを味わえるかな。」がくっついてくる。
今までより、この先のほうが、きっと少ないんだろう。
ふと気づくと、そんなことを思うようになっている。
別に、何か特別な結論があるわけじゃない。
「だからこうしよう」とか、「今を大切に」なんて、そんな立派な話じゃなくて。
ただ、このカッとする夏の空気の中で、
「これ、あと何回だろう」って。
誰に言われたわけでなく、何かきっかけがあったわけでもないのに。
自然に思うようになっている自分を、
少し不思議に感じつつ、静かに受け止めているだけ。
いや。きっかけはあったのかもしれない。
自分が気づいていないだけかもしれない。
*
よくわからないけど。
どうやら、思うことって変わっていく。
夏は毎年来るけど、同じように感じることは、きっともうないのかもしれない。
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