キッチンで麦茶を飲もうとしていたら、背中越しに主人の声が飛んできました。
「モリシさぁ、もし移籍せんかったらE-1に出とったじゃろうね。」
モリシ。
もちろん、元サンフレッチェ広島の背番号10番、森島司選手のことです。
今は名古屋グランパスの選手。
「E-1」――1週間以上前に終わった東アジア選手権のことを、なんで今、急に?
そう思いながら、私はコップに麦茶を注ぎつつ、答えを探していました。
確かに、森島選手があのまま広島にいてくれたら、今回代表に選ばれていた可能性はあるかもしれない。
でも、もしそうだったら、マルコスジュニオール選手は加入していなかったかもしれないし、マルコス選手の広島デビュー戦である、2023年ホーム川崎フロンターレ戦の勝利もなかったかもしれない。(マルコス選手の芸術的シュートでの得点あり。さらに決勝点はマルコス選手のワンタッチパスから満田誠選手のゴールだったから。)
2023年アウェイ、アビスパ福岡戦での、試合終了前の荒木選手のあの劇的なゴールもなかったかも。(マルコス選手のパスがアシストだったから。)
ACL2の出場もなかったかもだし、今いる選手たちとの出会いも、全部、別の景色になっていたかもしれない。
一人の選手だけれど、チームの中心で、存在感がある選手がいるかいないか。
その違いだけで、移籍する選手も、スタメンも、チームの空気も、全部変わってくる可能性がある。
その違いが、良い方向にも、悪い方向にも、今とは違う未来を形作っていたかも。
もしかしたら、怪我から復帰した満田誠選手とのシャドーコンビで無双して、優勝していたかもなぁ。
森島選手と松本泰志選手がいっしょのプレーももっと見たかったなぁ。どんなことになってたんだろう。
想像が膨らみまくり、主人になんと答えるか考えると、難しくなってきました。
私は、麦茶のグラスを持ちながら、「どうかねぇ。選ばれてたかもしれんけど、そうとも限らんよねぇ。」と答えました。
色々考えたくせに、結局何も言ってないのと変わらない、内容のない、面白みのない返答。
主人はそれを聞いて、何も言わず、するりと向こうへ行ってしまいました。
私は麦茶をごくごくっと飲んで、その会話は終わり。
でも、それから考えてしまうんですよね。
もし森島選手があの時、名古屋グランパスへの移籍でなく、サンフレッチェ広島残留を選んでくれていたら。
これはもうどうしようもない「もし」の話で、今さら考えても何も変わらないし、意味はない。
わかりすぎるほどわかっているし、考えないようにしていたはずなのに。
でも、スイッチを入れられたみたいに、また考えてしまうんです。
たぶん、主人もわかってたんだと思うんです。
考えても仕方ないことだって。
でも、E-1をきっかけに考えてしまい、自分なりに想像して、別の世界線を頭の中に描いて、
その出来上がった「もう一つの世界」を、誰かに言ってみたくなって、私に話しかけたんだろうなって。
だったら私も、自分なりに思い描いた世界線を語ればよかった。
「例えばね…」と前置きして、
森島選手が残っていた世界のサンフレッチェの話をすればよかった。
ACL2は逃していたかもしれないけど、もしかしたら天皇杯を獲ってた世界だったかもしれない。
森島選手のラストパスで、ナッシム・ベン・カリファが決める、そんな場面もあったかもしれない。
今年なら、森島司と中村草太のシャドーコンビが、得点を量産してたかもしれない。
曖昧な「どうかねぇ」で終わらせずに、
私なりに創ったもう一つの未来を、あのとき話せばよかったなと、今さら思います。
まぁ、主人は今もそこにいるので、今話せばよいんですけどね。
話したら、「どしたん急に」でしょうけど。
なんてことのない日常の一場面。
でも、そこから広がる「もしもの世界線」は、意外と深くて、面白くて、話がはずむはずなんですけどね。
いつか、タイミングを見て切り出すかもしれませんが、話す機会は永遠に来ないかもしれません。
どうなるでしょうね。
夏のドライブ旅行で、会話が途切れたら、話し始めてみようかな。
退社後、帰宅する道中で、なんかブログに書くことないかな…と考えていたら、一昨日のキッチンでのやりとりを思い出し、つれづれに書いてみました。
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