私は、人を呼び捨てにするのが苦手だ。
友達でも、後輩でも、恋人でも、夫婦でも。
なんなら自分の子どもでさえも、どうしても呼び捨てにできない。
名前のあとに「さん」とか「ちゃん」とか「くん」とか、何かしらつけてしまう。
意識してそうしてるというより、気がついたら、そうなってしまってる感じ。
それがクセなのか、性格なのか、何なのか、正直よくわからない。
でも、誰かの名前をそのまま口に出すと、少しだけ心がざわつく。
なんだか相手との距離が急に縮まりすぎてしまうような、不安に似た感じ。
それを口にした自分が、恥ずかしいような、変な感じ。
自分を呼び捨てにしてくる人にさえ、だ。
なんなんだろう。この感覚。これまで、いつの年代でも、考えてきた。
答えは出てないけど。50代になった今、思うこと。
呼び捨てって、ちょっと強い言葉だ。
親しみや愛情を込めて呼ぶこともできるけれど、
そのぶん、軽さや乱暴さにも転びやすい気がしてしまう。
私が呼び捨てにできないのは、相手に対してどこかで「すごいな」と思っているからかもしれない。
近しい人であっても、「この人にはちゃんと敬意を払いたい」と、自然に感じてしまう。
あるいは、自分の中に「呼び捨てにできるような立場じゃない」という意識があるのかもしれない。
昔から、そういう風に思い込んでいるところがある。
たとえば子どもを育てていると、「親なんだから、名前くらい呼び捨てにして当たり前」と思われることもあるけれど、
私はどうしてもそれができなかった。
赤ちゃんの時から20歳を過ぎた今まで、一度も名前を呼び捨てにしたことはない。
むしろ、話しかけるたびに、心の中でそっと敬語を使っているような気がする。
「○○ちゃん、今日も元気そうでよかったね」って、やさしく話しかける感じ。
もしかすると私は、人とちょっと距離を取りながら、でもちゃんと好きでいたいのかもしれない。
そのスタンスが、「呼び捨てにできない」と言う形で表れているのかもしれない。
みんなはどうなんだろう。
呼び捨て、できる人? それとも、私みたいに、つい何かつけちゃう人?
呼び方って、その人の性格が出るし、関係性もあらわれるから、なんだか面白いなって思う。
私はきっとこれからも、誰かの名前に、なにかをそっと添えながら呼び続けるんだろうな。
それが、自分にとってちょうどいい距離のとり方だから。





コメント