母の味といえば「おから」だった

雑記

こんにちは。たけのこです。

母の味が「おから」だっていう方,おられますか?

実家にいた時には気にもとめなかった「おから」が,今では私にとって故郷の味の主役です。

実家の裏には広い畑があり、食べる野菜はほぼ自給自足だった。
食卓に高い確率で出されたのは、「おから」だ。
卯の花に人参、青菜、ネギ、油揚げ、ちくわなど冷蔵庫にあるものが入っている。タッパーいっぱいに入れられていて、欲しい分だけスプーンでとってご飯にかけて食べる。
薄茶色のおからは、派手な存在ではなく、特別食べたいと思ったこともなかった。

大学入学と同時に実家を離れ、15年経った頃だった。里帰り出産のため、久しぶりに母の手料理を毎日食べられる時期があった。
その時、初めて「おから」のおいしさに気づいたのだ。
毎食毎食、タッパーから何度も山ほどすくってごはんにかけて食べた。すぐになくなってはまた作ってもらった。
出産して数ヶ月後、広島に帰る日が近づいてきた。
「お母さん、おからの作り方を教えて」
「醤油、砂糖、みりん、お酒、だしを入れて、水気がなくなるまで炊くだけよ」
「分量は?」
「そんなん、味を見ながら適当よ」
母が計量スプーンを使うのを見たことがない。いつも売られている醤油やみりんの入れ物そのままを傾けてジャーっと回し入れるのだ。
しかし必ずいつもの味で、おいしい。

適当かあ。そんなのでできるのか。
入れる調味料をメモし、自宅で何度か作ったが、母の味にならない。辛かったり甘かったり、水気が多過ぎたり少な過ぎたりだ。

時々無性に母の「おから」が食べたくなる。
インターネットでレシピを調べ、計量スプーンで調味料を測って入れてみた。確かにおいしくはできる。しかし、あの味ではないのだ。何かが違う。

「ねぇ、もう一回作るとこ見せて。」
久しぶりに帰省したとき、目の前で作ってもらった。
畑から抜いてきた小松菜、ネギ、人参。
冷蔵庫から取り出したのは油揚げととうふちくわ。
ざくざく同じくらいの大きさに切っていく。

中華鍋に油を入れ、具材を炒め始めた。
ここだ。この分量だ。
一瞬で、出汁、醤油、みりん、酒、砂糖が、中華鍋に入れられていく。
必死で見たが、たしかに適当だ。
いくらか入れて、人差し指で味見。またちょっと入れたりする。
調味料の配合パターンは無限にありそうなのに、こんなのでなぜいつも同じ味なんだろう。

考えてみれば、違うものはたくさんある。
畑から抜いたばかりの野菜。
県の名物、とうふちくわ。
広島ではなかなか手に入らない。
なにより母の料理キャリアだ。
自分が結婚して母となり、いちばん感心したこと。それは母の料理だ。
フルタイムで働きながらも、毎日朝晩作ってくれていた。
子供には歯ごたえのあるものを、祖父祖母には歯が悪いからとやわらかいおかずをいつも作っていた母。どれだけ大変だっただろう。
めんどうだとすぐお惣菜やコンビニ弁当を買ってしまう私。真似できないのもしかたないのかもしれない。

おから。安い材料費でできるが、調味料の配合で極上のおかずになってくれる。息子が孫を連れてくる頃には、調味料をジャーっと回し入れ、それでもおいしい「おから」が作れる母になりたい。

プロフィール
この記事を書いた人
たけのこ

50代女性会社員です。子育てがひと段落し、趣味を楽しみながら定年までの会社員生活を過ごしています。
趣味はサンフレッチェ広島を中心としたJリーグ観戦。最近はWEリーグも気になり始めました。その他、好きなYoutuberさんの話など、日々気になったことを綴っています。

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