昇進したくない会社員はおかしいのか

雑記

会社員として長く働いていると、昇進することが一つの目標のように扱われます。

役職が上がれば、給料も上がる。
会社から評価されていることもわかる。
周囲から見ても、順調に仕事をしているように見えます。

反対に、「昇進したくない」と言うと、向上心がないと思われるかもしれません。

責任を負いたくないだけではないか。
楽をしたいのではないか。
長く働いているのに、いつまでも今の立場でいいのか。

そんなふうに見られそうで、昇進したくないという本音を、会社ではなかなか言いにくいのではないでしょうか。

けれど私は今、昇進したくない会社員は、決しておかしくないと思っています。

なぜなら私自身、昇進した結果、自分に向いていない仕事をすることになり、苦しくなったからです。

私は自分から昇進を望んだ

私は、最初から昇進に興味がなかったわけではありません。

むしろ、自分から昇進を希望しました。

理由の一つは、等級が同じままでは、給料もほとんど変わらないことが嫌だったからです。

長く働いているのに、これからもずっと同じような給料が続く。そう考えると、少しでも上の等級を目指したほうがいいのではないかと思いました。

当時、子どもが大学受験を控えていたことも理由の一つでした。

大学に進学すれば、当然お金がかかります。少しでも収入が多いほうが安心です。

自分のためだけではなく、家族のためにも、昇進できるならしたほうがいい。

そう考えていました。

もちろん、評価されたい気持ちもあったと思います。

長く働いてきたのだから、それなりの立場になりたい。昇進することで、自分がこれまでやってきたことを認めてもらいたい。

その気持ちも、まったくなかったとは言えません。

だから私は、自分から昇進を希望しました。

そのときは、昇進した後に待っている仕事が、自分に向いているかどうかまでは、深く考えていなかったのだと思います。

昇進は、これまでの仕事の上級編ではなかった

昇進する前の私は、自分の担当する仕事をこなしていました。

わからないことを調べ、必要な資料を作り、期限までに仕事を終わらせる。問題が起きれば、自分なりに考えて対応する。

もちろん、何でも完璧にできたわけではありません。

それでも、自分の担当範囲の中で仕事を進めることは、長年の経験によって、それなりにできていたと思います。

けれど、役職が上がると、求められるものが変わりました。

自分の仕事だけをしていればよいわけではありません。

周囲の進捗を確認する。
仕事を割り振る。
メンバーに指示を出す。
問題が起きたときに判断する。
上司に状況を説明する。
関係者の意見をまとめる。
必要であれば、誰かに厳しいことも言う。

昇進とは、今までやっていた仕事が、少し難しくなることだと思っていました。

けれど実際は違いました。

私にとって昇進後の仕事は、それまでの仕事の上級編ではなく、まったく別の種類の仕事でした。

自分一人で考えて進める仕事と、人を動かして結果を出す仕事では、必要な能力が違います。

担当者として仕事ができることと、管理する立場で仕事ができることは、同じではありませんでした。

向いていない役割で、仕事ができない人になった

役職が上がったからといって、急に人をまとめる力が身につくわけではありません。

私は、人に指示を出すことが得意ではありませんでした。

自分の判断に自信が持てず、何かを決めるまでに時間がかかります。

相手がどう思うかを気にしてしまい、言わなければならないことを、はっきり言えないこともありました。

複数の人が参加する会議で、自分の意見を整理して話すことも苦手でした。

誰かと一対一で話すことはできても、大勢の中でその場の流れを読み、すぐに判断して発言することは、私にとって大きな負担でした。

それでも、役職がある以上、できませんとは言えません。

周囲からは、その立場にふさわしい働きを求められます。

できないことがあっても、努力して何とかしなければならない。経験を積めば、そのうちできるようになる。

そう考えていました。

けれど、努力すれば何でもできるようになるわけではありませんでした。

頑張れば頑張るほど、自分のできなさが目につきました。

判断が遅い。
人にうまく頼めない。
仕事を整理できない。
問題が起きると混乱する。
周囲に迷惑をかける。

昇進する前の私は、少なくとも自分の担当する仕事をしていました。

ところが昇進後は、いつの間にか「長く働いてきた人」ではなく、「役職に見合う仕事ができない人」になっていました。

それは、とても苦しいことでした。

給料が上がれば、それでよいと思っていた

昇進を希望した理由には、給料を上げたいという気持ちがありました。

そのこと自体は、今でも間違っていたとは思いません。

会社員として働いている以上、できるだけ多く給料をもらいたいと思うのは、自然なことです。

子どもの教育費や老後のことを考えれば、収入は少ないより多いほうがいいに決まっています。

ただ私は、昇進によって給料が上がることと引き換えに、自分が何を引き受けるのかを、十分には考えていませんでした。

給料が上がる。
等級が上がる。
評価される。

そこまでは考えていました。

けれど、その立場で毎日どのような仕事をするのか。自分はその仕事を何年も続けられるのか。仕事が終わった後も、心身に余力を残せるのか。

そこまでは考えられていませんでした。

昇進すれば収入は増えます。

けれど、増えた収入以上に失うものがある場合もあります。

仕事への自信を失う。
会社に行くことが怖くなる。
休日も仕事のことが頭から離れない。
眠れなくなる。
体調を崩す。

もちろん、誰もがそうなるわけではありません。

昇進によって力を発揮し、仕事が楽しくなる人もいます。

人をまとめるのが得意な人。責任ある仕事にやりがいを感じる人。自分で判断し、周囲を動かすことに向いている人。

そういう人にとって、昇進は新しい可能性を広げるものだと思います。

けれど、すべての人にとって、昇進が幸せにつながるわけではありません。

昇進していない同年代がうらやましく見える

私と同じくらいの年齢でも、役職についていない人はいます。

その人たちを見ていると、うらやましく感じることがあります。

自分の担当する仕事をして、時間になれば帰っていく。

部下の仕事まで背負う必要はない。
誰かの評価を決める必要もない。
チーム全体の責任を負う必要もない。

もちろん、実際にはそんなに気楽ではないのでしょう。

役職がなくても、難しい仕事を任されることはあります。

昇進していないことへの焦りや、給料が上がらない不満もあるかもしれません。年下の上司のもとで働くことに、複雑な思いを抱くこともあるでしょう。

だから、「昇進していない人は気楽でいい」と決めつけるつもりはありません。

それでも私には、うらやましく見えてしまうのです。

自分も最初から、昇進しない働き方を選んでいたらどうだっただろう。

給料は今より少なかったかもしれません。

周囲から、向上心がないと思われたかもしれません。

それでも、自分にできる仕事を続け、仕事への自信を失わずに済んだのではないか。

ここまで苦しくなることはなかったのではないか。

そんなことを考えてしまいます。

昇進しないことは、逃げではない

昇進したくないと考える人の中には、責任から逃げたい人もいるかもしれません。

けれど、それだけではないと思います。

自分が何に向いていて、何に向いていないのかを考えた結果、昇進しないことを選ぶ人もいます。

人を管理するより、自分の専門分野で働きたい。
部下を持つより、現場の仕事を続けたい。
給料より、心身の安定を優先したい。
仕事だけでなく、家庭や自分の時間も大切にしたい。

それは、向上心がないということなのでしょうか。

私はそうは思いません。

昇進しなくても、今の仕事を丁寧に続けることはできます。

新しい知識を身につけることもできます。

周囲を助けたり、後輩に経験を伝えたりすることもできます。

役職に就くことだけが、成長ではありません。

責任の重い立場を目指さなくても、自分なりに仕事に向き合うことはできます。

むしろ、自分に向いていない役割を引き受けて、心や体を壊してしまうより、自分が続けられる働き方を選ぶほうが、長い目で見れば会社にとってもよいのではないでしょうか。

昇進する人だけが偉いわけではない

会社には、昇進を目指す人が必要です。

責任ある立場を引き受け、周囲をまとめ、組織を動かしていく人がいなければ、会社は成り立ちません。

その役割を引き受けられる人は、すごいと思います。

けれど、昇進する人が偉くて、昇進しない人が劣っているわけではありません。

人にはそれぞれ、向いている働き方があります。

上を目指す人がいてもいい。
今の立場で長く働きたい人がいてもいい。
管理職ではなく、担当者として力を発揮する人がいてもいい。

会社では、昇進が一本道のように見えることがあります。

若いうちは担当者として働き、経験を積んだらリーダーになり、やがて管理職になる。

けれど、全員が同じ道を進まなくてもよいはずです。

人を管理する道だけでなく、専門性を生かす道や、今の仕事を安定して続ける道も、同じように認められてほしいと思います。

あのとき昇進しなければよかったのか

私は、自分から昇進を希望しました。

だから、誰かに無理やり役職を押しつけられたわけではありません。

給料を上げたいと思ったのも、家族のために収入を増やしたいと思ったのも、当時の私の正直な気持ちでした。

その選択をした自分を、すべて否定したいわけではありません。

実際にやってみなければ、自分に向いていないこともわからなかったと思います。

ただ、今の私が当時の自分に言えるとしたら、

「昇進することだけが、正解ではないよ」

と伝えたいです。

給料が上がるかどうかだけでなく、その先でどんな仕事をするのかを、もっと考えてもよかった。

昇進を断ったらどう見られるかではなく、その仕事を自分が続けられるかを考えてもよかった。

昇進しないことを、恥ずかしいと思わなくてもよかった。

そう思います。

昇進したくない会社員はおかしくない

昇進したくない会社員は、おかしいのでしょうか。

私は、全然おかしくないと思います。

責任から逃げているわけでも、仕事を怠けたいわけでもない。

自分に合った仕事を、無理なく長く続けたい。

それも、立派な働き方の一つです。

昇進すれば、給料や評価を得られるかもしれません。

けれど、昇進しないことで守れるものもあります。

仕事への自信。
心と体の健康。
家族と過ごす時間。
会社以外の生活。
無理をせずに働き続けること。

何を大切にするかは、人によって違います。

私は一度、自分で昇進を望み、自分に向いていない役割を引き受けました。

そして、苦しくなりました。

だから今は思います。

昇進しないという選択は、後ろ向きな選択ではありません。

自分が壊れずに働き続けるための、現実的で大切な選択になることもあるのです。

プロフィール
この記事を書いた人
たけのこ

50代女性会社員です。子育てがひと段落し、趣味を楽しみながら定年までの会社員生活を過ごしています。
趣味はサンフレッチェ広島を中心としたJリーグ観戦。最近はWEリーグも気になり始めました。その他、好きなYoutuberさんの話など、日々気になったことを綴っています。

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