9月12日のセレッソ大阪戦。
サンフレッチェ広島は6-1で勝利した。
鮎川峻選手がハットトリック。
鈴木章斗選手が2得点。
中野就斗選手も1得点。
現地で見ていた私にとっては、もう笑ってしまうくらいゴールが入る、楽しい試合だった。
でも、試合が終わってからもずっと心に残っている場面がある。
鈴木章斗選手。
この選手は、人柄まで神なのではないか。
そんなことを思った。
自分もハットトリックがかかっていた
前半10分、広島がPKを獲得した。
キッカーは鈴木章斗選手。
これをきっちり決めて先制。
さらに前半アディショナルタイムにもゴールを決め、鈴木選手はこの日2得点を挙げていた。
一方の鮎川峻選手も2得点。
そして後半、広島が再びPKを獲得した。
このとき私は当然のように鈴木選手が蹴るものだと思っていた。
最初のPKを決めているし、何よりあと1点取ればハットトリックなのだから。
ところが、ボールを持っていたのは鮎川選手だった。
え?
鮎川選手が蹴るの?
鮎川選手も2得点。
つまり、どちらが蹴ってもハットトリックがかかっていた。
試合後の報道によると、鮎川選手が「蹴りたい」と言い、鈴木選手からボールをもらったそうだ。
そして鮎川選手はPKを決め、プロ初のハットトリックを達成した。
「峻くんが決めたらチームの流れも良くなる」
さらに驚いたのは、その後に知った鈴木選手の言葉だった。
クラブ公式SNSでは、鮎川選手にPKを譲ったことについて、
「峻くんがPKを決めたらチームの流れも良くなる」
という鈴木選手の言葉が紹介されていた。
いやいや。
あなたもハットトリックかかってましたよね?
と思ってしまった。
FWなら、点を取りたいはずだ。
ましてや、あと1点でハットトリック。
しかも最初のPKを自分が決めている。
そのまま自分が蹴っても、誰も何も思わなかったはずだ。
それでも鮎川選手が「蹴りたい」と言ったら譲った。
自分が3点取ることよりも、鮎川選手が3点目を取ることがチームにとってプラスになる。
鈴木選手はそう考えた、ということだ。
すごいな、この人。
そして、ボールを拾ったのも鈴木選手だった
もう一つ、すごく好きだった場面がある。
鮎川選手がPKを決め、ハットトリックを達成したあと。
鈴木選手がボールを拾って、ベンチのほうへ持っていった。
ハットトリックの記念球だったからだろうか。
PKを譲っただけでも十分なのに。
鮎川選手が3点目を決めたら、今度はボールを拾って持っていく。
自分だって2点取っている。
自分だって、あのPKを蹴って決めていたらハットトリックだった。
それなのに。
なんだろう。
こういうちょっとした行動に、その人が出るような気がする。
鮎川選手にとって特別な試合になった
考えてみれば、この日の鮎川選手にとって、3点目には特別な意味があった。
大分への期限付き移籍を経て広島に戻り、この試合が復帰後のリーグ戦初先発。
そしてプロ初のハットトリック。
鈴木選手がそこまで考えてPKを譲ったのかはわからない。
でも、鮎川選手にとって忘れられない試合になったことは間違いない。
その最後の1点を後押ししたのが、同じFWで、同じくハットトリックがかかっていた鈴木選手だった。
そう考えると、ますますいい。
あのハート、誰に向けてるの?と思っていた
そしてもう一つ。
鈴木章斗選手について、「そうだったの?」と思ったことがあった。
ゴールを決めたあとに見せていた、両手で作るハートマーク。
あれを見たとき、私は勝手に、
「彼女さんでも見に来てるのかな?」
と思っていた。
特定の誰かに向けてやっているように見えたのだ。
ところが、TSSの「TSSライク!」を見ていて、違っていたことを知った。
あのハートは、ファン・サポーターに向けたものだったそうだ。
え。
あれ、私たちにやってくれてたの?
そう思ったら、急にあのハートの見え方が変わった。
勝手に彼女へのハートだと思っていて、ごめんなさい。
ゴールを決めて、スタンドにハートを送る。
ファン・サポーターからもらった応援に、あんな形で返してくれていたのだと思うと、なんだかうれしくなった。
「アキトゴール」を喜んでくれていた
そういえば、鈴木選手はチャントができたときにも、喜んでくれていた。
「本当にチームの一員になれた気はしている」
「認めてもらったのかなと思っています」
そんなふうに話されていた。
広島に移籍してきた選手が、サポーターから自分のチャントを歌ってもらって、「チームの一員になれた」と感じてくれている。
そしてゴールを決めたら、今度はスタンドに向かってハートを送る。
なんだかいい関係だなと思う。
自分の長所は「周りをみて行動できる」
今回、鈴木選手についていろいろ調べていて、面白いものを見つけた。
湘南ベルマーレ時代の公式プロフィールだ。
「自分の性格を一言で言うと?」という質問に、
「優しい」
と答えられている。
自分で言うんだ、とちょっと笑ってしまった。
でも、もっと「なるほど」と思ったのが、自分の長所についての回答だった。
「周りをみて行動できる」
今回の試合を見たあとだと、
うん。知ってる。
と言いたくなってしまう。
自分にもハットトリックがかかっているのに、鮎川選手にPKを譲る。
鮎川選手が決めたら、ボールを拾ってベンチへ持っていく。
ゴールを決めたら、ファン・サポーターにハートを送る。
確かに、周りを見ている人なのだと思う。
昔は「自分に矢印を向けられなかった」
さらに鈴木選手は、過去のインタビューで高校時代の自分についても話している。
当時は、うまくいかないと周囲のせいにしてしまうことがあったそうだ。
そこを指導者から指摘され、「自分に矢印を向ける」ことを意識するようになった。
苦しい時期には、仲間から「一緒に頑張ろう」と声をかけてもらった経験もあり、
「周りの人たちに支えられて、いまの自分があります」
と振り返っている。
この話を知ってから今回のPKを見ると、少し違って見える。
かつて仲間に支えてもらった経験がある選手が、今度は仲間の大事な瞬間を後押ししている。
そういう経験をしてきた人だからこその行動なのかな、とも思った。
「信頼される選手になりたい」
プロ入りした頃、鈴木選手はこんな目標も語られていた。
チームにもサポーターにも、一年を通じて信頼されるような選手になりたい。
それから数年経って。
今、鈴木選手はサンフレッチェ広島の10番を背負っている。
ゴールを決めてくれる。
それだけでもFWとして頼もしい。
でも、自分にもハットトリックがかかったPKを仲間に譲ったり、その記念のボールを拾ったり、サポーターにハートを送ったり。
そんな姿を見ていると、
「信頼される選手になりたい」
と語られていた選手が、そのとおりの選手にちゃんとなられていると感じる。
ゴールを決めるから好き、だけじゃなくなってきた
鈴木章斗選手にはこれからもたくさんゴールを決めてほしい。
広島の10番として、どんどん活躍してほしい。
でも今回の試合を見て、応援したくなる理由が増えた。
鈴木章斗選手の人柄がすばらしく、尊敬できる選手であると気づいたことだ。
華やかな6得点の試合だったけれど、私の中には、ゴールとは別のところでも鈴木章斗選手の姿が残った。
サッカーって、こういうところを知ってしまうと困る。
また好きな選手が増えてしまう。
鈴木章斗選手。
プレーだけじゃなく、人柄まで含めて、ますます応援したくなった。





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