川村拓夢選手がサンフレッチェ広島に帰ってきた。
広島で育ち、サンフレッチェユースからトップチームへ昇格した選手なので、広島やクラブに対する思いは強いのだろうとは思っていた。
けれど、加入会見を読んでみると、私が想像していた以上だった。
帰りたくなるから、試合を見なかった
会見で特に心に残ったのが、海外へ移籍してからの2年間、サンフレッチェの試合をあえて見ないようにしていたという話だ。
理由は、
「見たら帰りたくなってしまうから」
だったという。
川村選手は、けがもあったため、もう一度ザルツブルクでプレーしたいという気持ちを持っていたそうだ。
ところが、オーストリアキャンプ中のサンフレッチェが現地で試合をする姿を見て、紫のユニフォームで戦う選手たちを格好いいと感じ、サンフレッチェが自分にとって特別なクラブであることを再認識した。
そして、戻りたいという思いが一気に強くなったという。
「見たら帰りたくなる。だから見ない。」
そんなことがあるのかと思った。
海外で活躍するためには、いったん古巣への思いを遠ざける必要があったのかもしれないけど、
意識して遠ざけなければならないほどの、強い気持ちだったということだ。
忘れられないからこそ、見ないようにしていたのだ。
そう考えると、その言葉の重さはかなりのものなんだなぁ…と伝わってきた。
「移籍するならサンフレッチェ」
栗原圭介強化本部長の話も印象的だった。
ザルツブルクとの契約が残り、移籍するとなれば他クラブからのオファーも予想される中で、川村選手はほかに目を向けることなく、移籍するならサンフレッチェという強い意思を示したという。
栗原強化本部長は、今回の復帰が成立したのは、川村選手が示した広島愛、サンフレッチェ愛があったからだと説明されている。
川村選手はまだ26歳だ。
これから活躍すれば、国内外のクラブから、サンフレッチェよりも良い条件のオファーがバンバン届く可能性だってある。
プロの選手なのだから、より高いレベルや良い条件を求めることは、何も悪いことではない。
背番号8に込められた覚悟
川村選手は今回、自分からクラブに、もう一度背番号8をつけたいとお願いしたそうだ。
8番は、森﨑和幸さんが長く背負ってきた、サンフレッチェにとって特別な番号である。
川村選手は、その番号を再び背負う理由について、
「サンフレッチェでキャリアを全うする」
という覚悟を込めたと話している。
加入発表の段階でも、サンフレッチェでタイトルを獲ることは小さい頃から変わらない夢であり、その夢のために自分のキャリアを懸ける覚悟だとコメントしていた。
キャリアを全うする。
キャリアを懸ける。
どちらも、簡単には口にできない言葉だと思う。
サポーターとしては、ただただうれしい。
その一方で、そんなにはっきり言ってしまって大丈夫なのだろうか、と少し心配にもなった。
これから大活躍して、驚くような条件のオファーが届くこともあるかもしれない。
そのとき、この会見での言葉が川村選手を縛るものになってほしくはない。
けれど、将来がどうなるか分からない中で、今の川村選手が、ここまでの覚悟を持って広島に帰ってきてくれた。
そのことは、素直に受け取っていいのだと思う。
サポーターも広島への思いに心を動かされていた
SNSを見ても、川村選手のプレーへの期待だけでなく、クラブへの深い思いに心を動かされた人が多かった。
「広島愛に泣ける」
「この選手が8番を背負ってくれることが幸せ」
「真面目で律儀すぎる」
「一緒に優勝しよう」
そんな喜びや感謝の声が並んでいた。川村選手の言葉を受け、「もっと応援したくなった」という空気が広がっているように感じる。
きっと、多くのサポーターが感じたことは同じなのだと思う。
元日本代表のすばらしい選手が加入してくれたこともうれしい。
中盤に力強い選手が戻ってきたこともうれしい。
けれど、それ以上に、川村選手がここまでサンフレッチェを好きでいてくれたことが、うれしかったのだ。
選手だけでなく、クラブも待っていた
今回の会見を読んで感じたのは、川村選手だけがサンフレッチェを思っていたのではないということだった。
クラブ側も、海外での活躍を願いながら、何かあったときには戻ってきてもらえるよう準備していたのだそうだ。
ボランチなら誰でもいいとは考えず、川村選手が帰ってこられる状態を作っておきたいと思っていたという。
選手がクラブを好きで、クラブも選手を大切に思っている。
今回の復帰は、そんな両思いによって実現した移籍だったのだろう。
だから、こんなにもサポーターの心を動かすのだと思う。
背番号8を、もっと応援したい
川村選手は、サンフレッチェが次の段階へ進むためにはタイトル、特にリーグ優勝が必要だと語られていた。
自身も海外での2年間に悔しい思いをしたからこそ、2015年以来となるリーグ優勝を目指して、全力で戦うという。
この先、本当にずっと広島でプレーすることになるのかは、誰にも分からない。
サッカー選手の未来には、けがも、競争も、思いがけないオファーもある。
だから私は、「キャリアを全うする」という言葉を約束として握りしめるのではなく、川村選手が今示してくれた覚悟として、大切に受け取りたい。
広島に帰ってきてくれて、ありがとうございます。
そこまでサンフレッチェを好きでいてくれて、ありがとうございます。
加入の発表を聞いたときよりも、会見を読んだあとのほうが、ずっと川村拓夢選手を応援したくなった。
エディオンピースウイング広島のピッチに立つ背番号8を、これまで以上にしっかり応援したい。




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