実家に帰ってからというもの、母からいろいろなものを食べさせられている。
今度は、白い液体が入ったコーヒーカップを持ってきた。

「豆乳、飲んでみる?」
豆乳なら私もスーパーで買うことがある。
それほど珍しいものでもない。
そう思って一口飲んでみた。
……濃い。
私が知っている豆乳と、全然違う。
スーパーで買う豆乳とはかなり違う
スーパーで買う豆乳は、もっとさらっとしている。
ところが母が持ってきた豆乳は、少しドロッとしている。
甘くもない。
大豆そのものを飲んでいるような感じで、いかにも体に良さそうな味がする。
正直に言うと、一口目で、
「おいしい!」
とは思わなかった。
でも、二口、三口と飲んでいると、不思議と慣れてくる。
ものすごくおいしいわけではない。
でも、
「まあ、これはこれでありかも」
と思えてくる。
なんとも不思議な飲み物だった。
最後に待っていた、ドロッとしたもの
そのまま飲み進めていくと、カップの底に、さらに濃いドロッとしたものが残っていた。
これは、さすがにもういいかな。
そう思ったのだが、母が言う。
「それももったいないから。栄養だから飲んだほうがいい」
そう言われると、残すのも悪い気がしてくる。
カップを傾けながら、飲めるところまで飲んだ。
普通の豆乳を飲んでいるというより、大豆を丸ごと食べているような気分である。
ところが後から調べてみると、この「ドロッと感」こそ、この豆乳の特徴らしい。
母が使っていたのは「ソイリッチ」
聞いてみると、この豆乳は買ってきたものではなかった。
実家で作った大豆を、専用の機械に入れて作っているのだという。
その機械の名前が「ソイリッチ」。
調べてみると、乾燥大豆と水を入れてスイッチを押すと、加熱しながら大豆を細かく砕き、約30分で豆乳ができる機械だった。
公式の作り方では、水800mlなら乾燥大豆60~80gが目安になっている。
母が言っていた「一度に800cc作る」というのも、この機械の最大量だった。
「おから」が出ない豆乳だった
さらに調べて、普通の豆乳との大きな違いがわかった。
一般的な豆乳は、大豆を絞って豆乳とおからに分ける。
ところがソイリッチでは、おからを分離せず、大豆を丸ごと細かくして飲む。
そのため、メーカーでは「完全豆乳」と呼んでいるらしい。
なるほど。
だから、あんなに濃かったのか。
そして、カップの底に残っていたドロッとしたものも、
「それも栄養だから飲みなさい」
と母が言っていた意味が、ようやくわかった。
大豆にはたんぱく質だけでなく食物繊維も含まれている。
普通ならおから側に残る部分まで一緒に飲むのだから、市販のさらっとした豆乳とは食感が違うのも納得できる。
知らずに飲んだ私は、
「なんだ、このドロッとしたものは」
と思っていたのだけれど。
母のほうがちゃんとわかっていた。
父と母は毎日200ccずつ飲んでいる
実家では、一度に800cc作っている。
それを2日間に分けて、父と母が1日200ccずつ飲んでいるそうだ。
800cc÷2人÷2日。
きれいに飲み切る計算である。
しかも使っている大豆は、自分たちで作ったもの。
大豆を育てて、その大豆から豆乳を作って、毎日飲む。
なかなか徹底している。
実家に帰ると、知らない健康習慣が増えている
先日は黒にんにくを食べさせられた。

今度は自家製の完全豆乳である。
しかも、黒にんにくに使うにんにくも、豆乳に使う大豆も自家製。
いつの間に実家は、こんなに健康志向になったのだろう。
私はスーパーで豆乳を買うときも、どちらかというと飲みやすいものを選んでしまう。
だから最初は、この濃厚な自家製豆乳を、
「うーん……」
と思いながら飲んでいた。
それなのに何口か飲むと、
「まあ、ありかな」
と思えてくるから面白い。
そして最後には、母に促されて、底のドロッとしたところまで飲んでいる。
「おいしいから、もっと飲みたい」という飲み物ではない。
でも翌日また出されたら、たぶん普通に飲むと思う。
実家に帰るたびに、私の知らないものが出てくる。
黒にんにくの次は、完全豆乳。
さて、次は何を食べさせられるのだろう。





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